客先常駐(SES)ってどんなお仕事なの?
社内SEと比較しどんなメリット・デメリットがあるか知りたい!
と言った疑問に答えます。
客先常駐(SES)のメリット・デメリットを分かり易く解説する為に、IT業界の社内SEと違いを比較し解説していきます。「一言で、客先常駐(SES)のメリット・デメリットは何ですか?」と聞かれても人によったり・物事のとらえ方で感じ方は千差万別です。
本記事では、社内SEと客先常駐(SES)の仕事の特徴・違いをもとに客先常駐(SES)のメリット・デメリットを解説します。同じシステム開発・運用を行う2つの職種の比較により客先常駐(SES)のメリット・デメリットを浮き彫りにしています。
客先常駐(SES)のメリット・デメリットまとめ
客先常駐(SES)のメリット
①IT技術を様々な企業で学ぶことが出来る
②管理職としてではなく一生現場で挑戦も可能
③働き方は就業する企業に依存しない
④底堅い求人と将来性
客先常駐(SES)のデメリット
⑤社内SEと比較して年収が低い
⑥案件により業務内容が変わる
⑦上流工程に携わるチャンスが薄い
⑧働き方が従事する企業で変化する
客先常駐(SES)と社内SEを比較した際のSESの特徴とは?
客先常駐(SES)のメリット・デメリットの前に、客先常駐(SES)と社内SEの特徴から解説します。この特徴をふまえて、後半でメリット・デメリットを解説していきます。
まずは、客先常駐(SES)/社内SEの共通点から解説します。
・ITに関連した仕事
・初心者時代に求められる技能
ITに関連した仕事
社内SEも客先常駐(SES)もITに関連した仕事です。当たり前の様ですが非常に重要なポイントです。
同じシステムを作り上げるお仕事であり求められるスキルセットも近い(特にエントリーレベルでは近い)のが共通項です。
一方、(後述で更に補足しますが)キャリア・働き方・年収が異なってくるのは非常に興味深いです。待遇・働き方がまるで違います。この違いは、システム開発における役割と、そもそものビジネスモデルの違いが大きく影響します。
ビジネスモデル・ゴールの違い
社内SE ビジネスは自社製品・サービス ゴールはITでビジネス・業務支援
SES IT業務へのリソースの提供 ゴールは依頼される業務の遂行
初心者時代に求められる技能
求められるスキルにも共通点があります。社内SE/SESの駆け出しの頃は、システム運用、テスト支援といった、エントリーのスキルが求められます。
SESだとスキルつかない
— ヨーショウ@IT業界の歩き方 (@engineer_yosho) October 28, 2019
半分正解で半分間違いです。
IT業界で生き抜くには正しく知る事が必要ですよ。
正確にはSI系プロジェクトのSES要員で初心者レベルだとまずはプログラミングでは無くて、テスターからスタートする事が多い。SESのビジネスモデルはエンジニアを現場に入れると儲かるからですね。
業界は同じ、出発点も近い事が分かると思います。ここから社内SEとSESの違いに迫ります。
社内SEに興味が湧いた方には、「社内SEって『やめとけ?大変?楽?きつい?』現社内SEが実態解説」の記事もあわせておすすめです。社内SEってどんな感じのお仕事のなのかイメージが湧きます。
客先常駐(SES)・社内SEの違い
SESと社内SEの違いは以下です。
・客先常駐(SES)の仕事の目的
・キャリアパス
・年収
・SESの働き方は案件先の働き方に依存
客先常駐(SES)の仕事の目的
SES/社内SEの作業内容的には、非常に類似していますが、目的に大きな違いがあります。社内SEの目的はITソリューションの導入ではなく、IT技術を導入しビジネスや業務効率化に貢献する事です。一方、SESの仕事の目的は依頼・期待された業務を遂行しシステム品質をあげる事が目的です。つまり、SESのお仕事はサービス業です。
再掲 ビジネスモデル・ゴールの違い
社内SE ビジネスは自社製品・サービス ゴールはITでビジネス・業務支援
SES IT業務へのリソースの提供 ゴールは依頼される業務の遂行
キャリアパスの違い。SESではなかなかキャリアを築きづらい
社内SEとSESさんのキャリアパスも異なります。以下は一般論です。
社内SEの場合、社内SE→管理職→経営幹部→CIO
客先常駐(SES)の場合、SEさん→管理職 or スペシャリスト→経営幹部→社長
社内SEのキャリアパスとしては、上を目指す=管理職のイメージ強いです。一方、客先常駐(SES)の場合、スペシャリストとして活躍を続ける方も時々見かけます。
キャリア構築においては、SESは案件でどうしても職場を転々とするので自身の狙いで強みに集中して経験を積み上げていくのがなかなかできません。IT素人の内は好きな事も、強みも分からないのでいいかもしれませんが、自分が分かってきたらキャリアを積み上げる行動が必要になります。
SESは常駐する顧客によって請け負う仕事が様々だったり、自社から空いているプロジェクトに派遣されたりするので、何もなくそのまま仕事を受けるだけだと「会社に言われるがままにやってきた感があるキャリア」になるわけで、それがSESのキャリアが築けていないと判断される要因なのかなと思います。
— むぎ🌾 (@MUGI1208) October 26, 2018
客先常駐(SES)さんがキャリアを意識的に積み上げる為には、
①自分の好きな事・得意な事を認識する
②企業に交渉し強みを生かせる案件に配属を希望する
→社員を大切にする企業、且つ、案件も豊富な企業であれば通る可能性が高いです。
→通らない場合は、SESのもっとあなたを大切にしてくれる企業への転職がおすすめ
③SESという働き方から、社内SEとして特定の領域・業種の興味・強みを伸ばす、もしくは、特定の技術領域を伸ばしたい場合は、Sier SEもおすすめです。SES・SEさんにおすすめの転職エージェントは「【必見】SESの転職におすすめエージェント15社比較」で解説しています。
年収
SESさんの平均年数と社内SEさんの平均年収にも開きがあります。SESさんの平均年収は300万~400万と言われています。それに対し、社内SEの平均年収は510万円です。この金額の背景には、IT業界の構造が根深く紐づいています。
エンジニアの平均年収が580万とのことですが、中央値はもっと低いでしょうね。
— Nishi🇺🇸海外系エンジニア (@masakinishi_com) April 11, 2021
ついでに現実をもう一つ突きつけると、SESから派遣されたベテランエンジニアの年収よりも、派遣先のメガベンチャーの新卒年収の方が高いことは普通にありますので、上と下の差は激しそうですね…
年収の違いのIT業界の背景
ユーザー企業に勤める社内SEは、自社のビジネスを改善する為にビジネス・業務与件に基づきプロジェクトを立ち上げます。ほとんどの場合、システム開発の依頼を大手Sier(1次受け)に支援をいらします。大手Sierもリソース不足の場合は、その仕事を一部を2次受けのSier→3次受けSier→4次受けSierと言った具合で人集めを行いリソースを確保します。この構図がIT業界の多重下請け構造です。この下請を依頼する過程で、最終的に作業を実施するSEさんに支払われる対価はピンハネされます。
結果として、以下の様なコメントを多数見かけます。
客先常駐で勤務地がころころ変わる、自社に労務管理の裁量がなく客先次第で労働環境がいくらでも悪化する、「この金額でどう?」みたいな金額で人を釣る人売りが横行しているSESが毛嫌いされるのは当然のことですね。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) April 24, 2019
更に詳しくは、以下の記事で解説しています。
客先常駐(SES)の働き方は案件先の働き方に依存
1つ言えるのはSESで働くということは、客先次第で環境が劇変するということ。自分の最後の現場はとても良くできればずっといたいような現場でしたが、前の現場は酷かった。会社は自分を守ってくれない。
— gu3.net (@bystander_k) September 28, 2018
社内SEの働き方は、お仕事をする企業の文化に依存します。一方、SESさんの働き方は就業する企業にあまり依存しません。一方、お客様の働き方に依存しその常駐する企業の考え方・働き方を色濃く反映します。
もちろん、SESの企業規模・パワーバランスによっては派遣先でもそれなりに契約に記載のある内容での働き方を通すことはできるかもしれません。ですが、実際問題、客先みんなが遅くまで残っている場合SESだからとそそくさとは帰りにくいのが実態です。
結果論として、以下があります。
SESの面倒くさいところって、常駐する客先次第で満員電車が不可避になるところだよなー
— ぼっつさん@システム屋 (@bottusan1073) March 1, 2019
客先常駐(SES)のメリット・デメリット【メリット】
ここまで社内SEとSESの様々な違いを解説しました。人によってはメリットと感じる場合、デメリットと感じる場合両方あると思います。以下で整理しました。
客先常駐(SES)の仕事のメリット
①IT技術を様々な企業で学ぶことが出来る
②管理職としてではなく一生現場で挑戦も可能
③働き方は就業する企業に依存しない
④底堅い求人と将来性
①IT技術を様々な企業で学ぶことが出来る
SESのお仕事は、「案件ガチャ」という言葉もあるように、配属される企業・案件によります。SESはその働き方から、様々な企業でお仕事する機会があるので、色々な経験が詰めます。
IT未経験でとりあえずIT業界へのエントリーポイントとしてSESにチャレンジする方もいます。異業種転職のハードルが低いだけではなく、IT業界の右も左もわからない時にいろいろな経験を積むことができるので自分の本当にしたいことを探す機会になったりもします。
未経験者からSESへの転職方法に関しては、こちらの記事を参照ください。
②管理職としてではなく一生現場で挑戦も可能
客先常駐(SESの特徴でご説明しましたが、SESのスペシャリストとして活躍をつづける事も可能な点がメリットです。自分は技術が好き、開発とずっと現場で携わっていきたいという道も可能です。
③働き方は就業する企業に依存しない
客先常駐(SES)の場合、仕事は客先を転々とします。したがって、働き方はその配属先企業の文化・働き方に依存します。万が一ブラックな企業に就職してしまったとしても、いい案件に配属されれば働き方が変化するのがメリットです(よく変わるか・悪くなるかは運しだいですが、変化があるという視点でメリットにしました)
④底堅い求人と将来性
ITはビジネスにとって欠かす事の出来ない存在です。ITの活用がビジネスの成否を左右するといっても過言ではありません。このトレンドは今後も益々強まると予想されます。
実際、ITの求人のみ堅調に底堅く推移しているのが実態です(以下図の緑線)
IT需要の増加に伴い2030年には最高で79万人のIT人材不足になると予想されています。
更に詳しくは、「今後もIT業界って魅力的!?社内SEの将来性と今後の需要に関して」の記事で詳しく解説しています。
客先常駐(SES)のメリット・デメリット【デメリット】
客先常駐(SES)のデメリットは以下の4つがあげられます。
⑤社内SEと比較して年収が低い
⑥案件により業務内容が変わる
⑦上流工程等あまりさせてもらえない
⑧働き方が従事する企業で変化する
⑤社内SEと比較して年収が低い
IT未経験者でも参画できるプロジェクトもあります。その為平均給与としては社内SE比較で安い傾向にあります。
SESの平均年収は350万~400万円に対して、社内SEの平均年収は510万円です。
年収が他IT職に比較して極端に低い理由は、
・IT未経験の方でも出来る仕事もあり平均単価を押し下げる=年齢歴には若い場合はそれも寄与
・多重下請け構造で単価・年収があげずらい
といった原因です。
客先常駐(SES)の多重下請け構造、年収の仕組みに関しては、「SESの(単価・年収・給与)相場は?年収が上らない解決案3選」の記事で詳しく解説しています。
⑥案件により業務内容が変わる
SESの仕事は案件に依存します。メリットとして様々な経験を積むことが捉える事ができるとも上記で解説しましたが、裏返すと折角興味のある案件・業務としても外される可能性があります。
SESの基本は、お客様の工数が足りない業務を補うのが目的であり、プロジェクトの終わりやIT業務自体の改善が進むことにより支援が不要になったりもします。
⑦上流工程等あまりさせてもらえない
客先常駐(SES)はそのお仕事の形態上、あくまでもお客様の業務の支援です。ほとんどの企業の場合、その企業に重要なコア業務・企業秘密に該当する業務は社員で行われます。つまり、付加価値の高い業務をさせてもらえないケースがかなりあります。多くのSESさんをいれて推進されるプロジェクトも経験上上流工程は、外部コンサルや社員で推進されるケースがほとんどです。
SESさんに良くあるのは、開発成果物レビュー、テスト支援、プログラミング、運用支援が主な業務です。
上流工程に興味があれば、社内SEがおすすめです。
⑧働き方が従事する企業で変化する
メリットで働き方が従事する企業に依存しないとも解説しましたが、これも解釈によってはデメリットになります。やっぱり、SESのデメリットとしては、案件・企業都合で従事している企業・案件との関係性を本人の意思に関係なく変更させられる点です。
客先常駐(SES)のメリット・デメリット8選|素人必見まとめ
客先常駐(SES)と社内SEの比較から以下のSESのメリット・デメリットを解説しました。
客先常駐(SES)のメリット・デメリットまとめ
客先常駐(SES)のメリット
①IT技術を様々な企業で学ぶことが出来る
②管理職としてではなく一生現場で挑戦も可能
③働き方は就業する企業に依存しない
④底堅い求人と将来性
客先常駐(SES)のデメリット
⑤社内SEと比較して年収が低い
⑥案件により業務内容が変わる
⑦上流工程に携わるチャンスが薄い
⑧働き方が従事する企業で変化する
客先常駐(SES)仕事に関する上記観点が嫌な方は、社内SEの方が向いていることになります。
年収的に上を目指したい人の選択肢としては、社内SEやSierのSEがおすすめです。
IT未経験者にとってはIT業界への参入障壁が低いのがSESの何よりの魅力です、転職活動時には、社内SE/Sier SE両面で探しつつキャリア構成の一環でSESで様々な経験をつみレベルアップを目指すのもありな選択肢です。
とどのつまり、SESか?社内SEどっちがいいか?悪いかの話ではなく、ITエンジニアとして10年後のざっくりな絵姿に近づくことができるのかどうなのか?で選ぶのがいいのではないでしょうか。