システム開発プロジェクトにおける体制図って何?
何をどう書けばいいの?
上手くプロジェクト体制図を書くコツは?
使えるテンプレートを知りたい
と言った疑問に答えます。
この記事を読むことで、システム開発の推進に必要なプロジェクト体制図を上手く準備する事が出来るようになります。
本記事で解説する概要
プロジェクト体制図の目的とは?
プロジェクト体制図作成のタイミングは?
プロジェクト体制図の役割分担は?RASCIと各役割の説明
プロジェクト体制図の書き方のポイント
プロジェクト体制図テンプレート
✔記事の信ぴょう性
SIer SE→現、一部上場企業社内SE(IT歴15年以上)。過去、基幹システム開発~グローバル16拠点への導入等実績。社内SEの為の情報サイトIT Comp@ss運営者。社内SE講師としても活躍。自身の社内SEとしての学びや経験を元に情報をお届けします。
本記事は、以下の社内SE基礎講座の「システム開発の体制図・役割分担」の記事です。
IT初心者・社内SE向け|システム開発の【基礎講座】関連記事一覧
起案・立上げフェーズ
システム開発とは?
システム開発の用語と選択肢
IT人材を取り巻く概況
システム開発の全体の流れ・工程
システム開発の体制図・役割分担
システム開発の成果物・ドキュメント
システム開発が学べる本22冊
システム開発の契約の種類
WBSの書き方とコツ
プロジェクトマネージメント
構築フェーズ
要件定義
システム要件定義の目的・進め方
要件定義の書き方・テンプレート
要件定義ヒアリングのコツ
要件をユーザー視点でヒアリング
業務フロー作成の書き方
要件定義の失敗を学び回避
要件FIX
PoC
PoCとは?進め方やコツ
PoC の読み方
PoC失敗事例
PoCの失敗回避するチェックリスト
システム開発ーテスト
システム開発のテスト全体像
機能一覧の書き方のコツ
システムテストで抑えるべき観点・項目
リリース・運用
システム移行計画のリスクと抑えておくべきポイント
プロジェクト体制図の目的とは?
プロジェクトにおいてなぜ体制図が必要か?を解説します。この体制図の目的の理解で抑えておきたいポイントは以下4つです。
チームの役割と責任の定義・明確化
関係者間での役割の共有
指揮命令系統の明確化
プロジェクト内コミニケーションの改善
チームの役割と責任の定義・明確化
プロジェクトとは、ある目的達成の為に集められた集団です。企業で働く従業員は、何かしらの組織に所属し役割に基づき従事していますが、プロジェクト組織とは、この組織とは異なる役割をアサインされ定められた期間で目的の達成を狙います。
その為、そのプロジェクトにおける役割、体制を明確化する為に体制図が必要になります。一方、体制図と言う図だけで役割を定義するのは難しい為、体制図とセットで期待する役割の定義も必要になります。イメージとしては、例えば、以下の様な体制図を作る場合、それとセットでそれぞれの役割を定義するイメージです。
プロジェクト体制図イメージ
プロジェクト体制に登場する一般的な役割例
PM(プロジェクトマネージャー)
プロジェクト全体を統括
PL(プロジェクトリーダー)
プロジェクトマネージャーの元実際のプロジェクト(特定領域の場合もあり)を推進
PMO
プロジェクトの推進を支援
開発ベンダー
開発を発注をうけ実際の開発を実施
社内SE
自社内に在籍し、主に開発ベンダーと業務ユーザーの間を取り持ちシステム開発を推進
業務ユーザー
システム化するための要求・要件を洗い出し。導入に向けた業務的な準備 例 トレーニング・物理的準備・契約等々
組織とは関係なく、プロジェクトの目的に合わせて様々な専門性も持つ集団で形成。例えば、業務領域Aのチームには、上記の組織の総務A/Bの人が混ざり合ったチームを形成するかもしれません。その為、組織のレポートラインではなく誰がその業務領域Aのリーダーになり、その人が誰にレポートするのか(以下の図の場合PL)を明確化します。
以下、組織図のイメージ
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
以下は、プロジェクト体制図のイメージです。組織によらずプロジェクトに必要な役割やチームを定義しています。
関係者間での役割の共有
体制図を書くことで、プロジェクトに参画するメンバーの役割を共有する事が可能です。更に、そればかりではなく、組織の上司や、他プロジェクトでもプロジェクトがどのような構成なのか共有するのにも役立ちます。
もし、体制図が明確化されていない場合、企業で関係するプロジェクトが同時期に走っている場合(殆どの企業はこの状態です)、誰に何の相談ができるのか人伝いに洗い出す手間が増加します。
指揮命令系統の明確化
体制図では、チーム事の役割を定義するばかりではなく、誰が誰に報告・レポートするのかも定義します。上図では、業務領域A/B、開発A~C全てをPLにレポートする構図となっています。例えば、業務領域A/Bの上にPL、開発A~Cの上にそれぞれのPLを置く場合、業務の責任者、システム開発の責任者を持たせているんだなと体制図から責任の役割を理解できます。
プロジェクト内コミニケーションの改善
体制図を作る事は目的ではありません。体制図を作り、プロジェクト内外の円滑な情報交換とプロジェクトの推進が目的です。体制図だけでこの全てを達成する事は出来ないですが、少なくとも体制図もない状態よりもより、円滑なコミニケーションに向かう足掛かりにはなります。
プロジェクト体制図作成のタイミングは?
プロジェクト体制図は必要とは分かったもののいつ作るべきか?と言った疑問に答えます。
結論、プロジェクト開始時点で体制図はあるべきです。
一人プロジェクトを除き、基本プロジェクトは誰かと協力し作業を進めます。その相手と建設的に役割を分担し効率的にタスクを進める為に体制図が必要です。注意点としては、何もシステム開発プロジェクトが開始される時点をプロジェクトの開始と勘違いしてはいけません。プロジェクトは、企画段階から存在します。この時点からプロジェクト体制の構築や役割の定義が必要になります。
以下図【IT初心者必見|システム開発の全体の流れ・工程とは?図解あり】の記事で解説したように、起案・立上げといった一般的なシステム開発の開始フェーズ(要件定義前)から体制図が必要です。
プロジェクト体制図の役割分担は?RASCIと各役割の説明
プロジェクト体制図と共に作成するのが役割分担表、RASCIとも呼ばれます。
RASCIとは、
R(Responsible)は実行責任者、
A(Accountable)は説明責任者、
S(Support)はサポーター、
C(Consulted)は相談先、
I(Informed)は報告先や共有先
の頭文字をとったものです。
混乱しないようにここまで登場した用語を整理すると
・体制図 = レポートライン・図で役割体制を明確化
・役割定義 = 体制図に登場する役割内容を定義
・役割分担表 = プロジェクトで登場するフェーズ・作業事に誰に何を期待するか定義
上記に基づきRASCIのイメージは以下です。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
プロジェクト体制図の書き方のポイント
プロジェクト体制図を書く上でのポイントをいくつか解説します。
解説するプロジェクト体制図書き方のポイント
フェーズにより必要な体制が変化する点を考慮
(特に大きなプロジェクトでは)フェーズによって必要な体制が変化します。例えば、企画フェーズでは開発メンバーはまだ不要です。一方、システム開発が開始される際には、開発メンバーや保守運用メンバーをプロジェクトに巻き込む必要があります。したがって、どのフェーズの体制を構築しようとしているのかも意識して体制図を作る必要があります。
ハイレベルなフェーズ別に必要なリソースのイメージは以下です。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
プロジェクト体制と組織図を混同しない
プロジェクト初心者がやってしまいがちなミスが、組織としてのレポートラインと、プロジェクトのレポートラインを混合してしまうケースです。プロジェクト体制は、組織の体制図ではありません。組織図に本来は依存せずに、ある特定の目的達成に集められた集団で役割やレポートラインを定義し校正されます。その為、組織のレポートラインをプロジェクトに持ち込む必要はありません。
体制図作成でよくやってしまいがちな例
赤が本当にプロジェクトに参画している人
青は実際には参画していながい、名前だけ記載のある人
を表しているとします
プロジェクトですので、実際の組織の上司・部下の関係と依存せず構成すべきです。
しかし、企業文化によっては上記の様ないびつなプロジェクト構成を見かける場合もあります。
この場合、係長の二人は組織のレポートラインとプロジェクトのレポートラインが混同してしまい作業が肥大化する可能性があります。
本来は、以下の様にシンプルな体制図であるべきです。
そして、組織としての報告をプロジェクトとは別に行い推進することが望ましいです。課長職の人が別に係長にレポートしてもOKです。
課長の人は、プロジェクトとは全く別で、組織のレポートラインに従い以下のようにプロジェクトとは別で報告をすべきです。
体制図名称は分かり易く記載
体制図はコミニケーションのツールです。その為、体制図で利用する名称もシンプルかつ分かり易くかつ相手に内容が伝わる名称を採用しなければなりません。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
社内テンプレートをなるべく活用
体制図構築初心者の方は、積極的に自社のテンプレートや過去プロジェクトで活用された体制図フォーマットを活用すべきです。もしかすると、以下で解説する体制図テンプレートの方が、より一般的で有効化もしれません。しかし、社内テンプレートの利用を進めるのには理由があります。
・社内文化に対応済み
どんな会社でも文化があります。その自社の文化を反映したのが社内で利用される体制図です。その体制図を活用することでその文化への対応が済みの状態となります。例えば、社内で業務チームを特別な名称で呼んでいたり、PMOをアドミンと書く等々ルールがあるかもしれません。そういったルールに対応済みな為、体制図でのコミニケーションコストを下げることが出来ます。
・社内承認も通りやすくなる傾向
社内で流通する体制図は、過去におそらく承認会議等を通過した成果物です。承認者もおそらく毎回固定の同じメンバーです。その方々が以前に見たテンプレートは、当然その方々とのコミニケーションコストを下げる事が出来ます。
レポートラインを意識する
体制図の一つ一つの箱は、人やチームを表します。その箱をつなぐ線は、箱と箱の関係性を表します。実際のプロジェクトで誰・どのチームが誰にレポートするのかを意識し体制図を構築する必要があります。又、違う見方ではレポートラインの線が集まる役割の人は、レポートされるチームの活動に責任を持つ必要があります。
プロジェクト体制図テンプレート
体制図テンプレート:ビズ研
ビズ研のサイトでは、ワード、エクセル等様々な一般的な組織図のテンプレートが紹介されています。
体制図テンプレート:Bizocean
Bizoceanのサイトでも企画書や提案書で活用できる体制図テンプレートが紹介されています。
組織図テンプレート:Canva
Canvaのサイトでも様々な組織図テンプレートが紹介されています。
FYI:Canvaは、オンラインのデザインツールおよびプラットフォームです。Canvaを使用すると、ビジネスカード、ポスター、ソーシャルメディアの投稿、プレゼンテーションスライド、ウェブサイトのデザインなど、さまざまなグラフィックデザインプロジェクトを簡単に作成できます。プリセットのテンプレート、画像、フォント、グラフィックスなどを使って、専門的な見栄えのデザインを作成することができます。 Canvaは、プレゼンテーション、マーケティング、ソーシャルメディアマネジメントなど、さまざまな目的で利用されています。
システム開発プロジェクトの体制図とは?(役割分担・書き方・テンプレート)まとめ
プロジェクト体制図は、プロジェクトという組織での役割とは違うプロジェクトの目的達成のために、集められた集団が協力して作業を行う為にチーム内外と役割を定義・共有し円滑にプロジェクトを進める為に必要なツールです。
体制図を書く際には、体制図の意味を理解し、分かり易く伝わるようにレポートラインやチーム名称等に注意して書く必要があります。
一般的なテンプレートもご紹介しましたが、社内プロジェクトを推進する際には一番おすすめは自社の文化に適応済みの社内で流通する体制図の活用です。
ここまでの内容を理解することで、プロジェクト体制図作成初心者の方も上手く準備を進められるのではないでしょうか。
体制図やRASCIに関しては、【社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール 】の第6章で他プロジェクトに必要な成果物の紹介と共に記載していますので、興味のある方はご参照ください。