システム開発プロジェクトって何の為に実施するべきなの?
一般的なシステム開発の目的を知りたい
システム開発プロジェクトに参画前にそもそもの目的を理解したい
と言った疑問に答えます。本記事を読むことで、
・折角作ったシステムが使われない
・作ったシステムを活用しビジネスに貢献できない
といった状況を回避することが出来ます。
結論、システム開発の目的はビジネスへの貢献です。ビジネス課題の解決の1手段です。
この1文で、腑に落ちる方は本記事を読み飛ばし、以下の他関連記事にお進みください。本記事は、以下【システム開発の基礎】の【システム開発の本質】の記事です。
IT初心者・社内SE向け|システム開発の【基礎講座】関連記事一覧
起案・立上げフェーズ
システム開発とは?
システム開発の用語と選択肢
IT人材を取り巻く概況
システム開発の全体の流れ・工程
システム開発の体制図・役割分担
システム開発の成果物・ドキュメント
システム開発が学べる本22冊
システム開発の契約の種類
WBSの書き方とコツ
プロジェクトマネージメント
構築フェーズ
要件定義
システム要件定義の目的・進め方
要件定義の書き方・テンプレート
要件定義ヒアリングのコツ
要件をユーザー視点でヒアリング
業務フロー作成の書き方
要件定義の失敗を学び回避
要件FIX
PoC
PoCとは?進め方やコツ
PoC の読み方
PoC失敗事例
PoCの失敗回避するチェックリスト
システム開発ーテスト
システム開発のテスト全体像
機能一覧の書き方のコツ
システムテストで抑えるべき観点・項目
リリース・運用
システム移行計画のリスクと抑えておくべきポイント
社内SE・情シスの主業務と言えばシステム開発です。まずは、その目的・意味を正しく理解する事が社内SE/情シスの業務を上手くこなす上でも、スキルアップする為でも重要です。この記事を読むことで、社内SE/情シスにとってのシステム開発の本質を理解することが出来ます。
本記事で解説する内容は以下です。
システム導入・システム開発とは?
システム化の目的
システム化のメリット(効果)・デメリット
システム化をする際の注意点
システム化の進め方
✔記事の信ぴょう性
SIer SE→現、一部上場企業社内SE(IT歴15年以上)。基幹システム開発、及び、グローバル16拠点への導入やSCM・MDM等システム開発。社内SEの情報サイトIT Comp@ss運営者。「社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール」著者。
システム導入・システム開発とは?
「システム導入、システム化、システム開発」とは?
これらの言葉で、システム導入=ITのソフトウェア開発と連想しがちですが、実際には、「システム導入、システム化、システム開発」は何もITの話だけをしているわけではありません。
システム=仕組みです。
したがって、
「システム導入、システム化、システム開発」=「仕組み導入、仕組み化、仕組み開発」という事になります。この理解が、「システム導入、システム化、システム開発」のプロジェクトを推進をする際に非常に重要です。
その理由は、【ITやソフトウェア】で仕組みを作る事は、ビジネスの課題解決の1手段だからです。したがって、システム開発プロジェクトの構図を図式化すると以下の様なイメージになります。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
「システム導入、システム化、システム開発」の例
例えば、ビジネス課題が【受注業務の生産性が低い】とします。
そのビジネスの課題をシステム化=仕組化し解決するとした場合の選択肢は以下です。
例1のシステム化(仕組化):業務標準化
俗人化しバラバラに各作業員で実施している業務を標準化し、それまで一人で1から10まで一人で実施していた作業を分業制の流れ作業の仕組みを作る
例2のシステム化(仕組化):外部委託
各拠点で実施していた受注業務を外部委託し作業コストを下げる
例3のシステム化(仕組化):ITソリューション導入
非効率にマニュアルで実施しているある作業をITソリューションを導入しシステムで自動的に実施できるようにする
この例からも分かるように、ITでの課題解決は1つの選択肢です。
「システム導入、システム化、システム開発」=ITソリューションの開発や導入と直ぐにITの話と勘違いされがちですが、それは間違いです。
システム化・開発の目的
システム化の目的は様々なあります。どのようなシステム化やシステム導入の目的が一般的に存在するのか解説します。解説する観点は以下の3つです。
3つの観点でシステム化の目的を解説
ビジネスの目線
ユーザー目線
間違ったシステム導入・開発プロジェクトにおける目的
ビジネスの目線で見るシステム化・システム導入の目的
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
上記図は、企業活動を簡易的に表した図です。企業はこれらの活動を元に、日々繰り返されるサービス提供や製造等の業務を実施しお客様に商品や価値を提供し対価を得ます。
この様々な活動をより良くするためにシステム化・システム導入し、上図のそもそものビジネスにおける大きなシステム(仕組み)の各領域の改善を狙います。改善を狙うシステム化の目的は、
・効率化
・生産性の向上
・情報の管理や共有の改善
・顧客サービスの向上
・コスト削減
・品質管理の向上
等、ビジネスへの貢献です。
ユーザー目線でシステム化の目的
ビジネス目線でのシステム化の目的の他に、業務ユーザー目線でのシステム化(ここでは分かり易くIT化)の目的を解説します。
・非効率に実施されている業務の簡素化
・作業工数の削減
・面倒な作業を単純化
・作業ミスの抑制による品質の改善
等々です。
一見すると、上記で解説したビジネス課題の解決と同期がとれているように聞こえますが注意が必要です。
注意点
ユーザー目線での要望は、企業・ビジネスの利益ではなく、そのユーザー本人の業務が楽になる要望になってしまっている場合がある。ユーザーから出される課題・要望を整理し、本当にその課題をシステム化・システム導入する事でビジネスに貢献できるのか吟味が必要。
間違ったシステム導入・開発プロジェクトにおける目的
例えば、受注業務改善のプロジェクトがあったとします。これを例に危険なシステム導入の目的の違いを解説します。
業務ユーザー視点
FAXでの注文に作業工数がものすごくかかっている為に、その作業を効率化する為に、ITソリューションの導入を検討しFAX業務の改善を狙います。
ビジネスの視点
FAXでの受注は売上の1%未満の割合でビジネスとしては、そのお客様に自社WEBサイトからの注文に変更いただいた方がメリットが大きいです。しかし、現在(あり得ないですが仮定で)、FAX業務のみを実施する5名はFAX業務を実施する事が仕事の為、従業員としては必死に自分の業務を改善を試みるわけです。
注意!!
このように、しばし、システム導入の目的は現場の目の前の人を楽にさせる目的に間違えて捉えられる場合があります。そうならない為に、システム化の目的はビジネスへの貢献である点をしっかりと認識する必要があります。
システム化のメリット(効果)・デメリット
システム化・導入を推進する事でメリット(システム導入による副次的によく発生する効果)やシステム導入により発生してしまうデメリットやリスクに関しても解説していきます。
システム化・導入のメリット・デメリット一覧
メリット
・効率性の向上
・既存業務の棚卸
・業務の標準化
・俗人化の脱却
・コスト削減
・作業品質の向上
・データの充実
・メンバーの成長
デメリット(リスク)
・導入コストと時間
・リソース枯渇
・離職
・プラット―フォーマービジネスの依存
・社内教育
一応、デメリットも記載していますが、個人的にはこれらはデメリットと言うよりはリスクに近い印象です。ビジネス課題を解決するためにシステム導入=変化が必要な場合、変化に伴い何かしらの副次的な変化(リスク)は致し方ありません。それらのリスクに対応しつつビジネスに必要な変化を生み出していく必要があります。
システム化・導入のメリット:効率性の向上
システム化により、ある作業の業務効率が改善し、作業員の工数を削減する事が可能です。
システム化・導入のメリット:既存業務の棚卸
システム化を実施する為に、得てして既存の業務分析をします。その過程で今までは過去の慣例で実施していた今は不要もしくは置換できる業務を発見し改善することが可能です。
システム化・導入のメリット:業務の標準化
システム化する為には、現状の俗人化している業務や個別最適している業務をある程度標準化するのが一般的です。システム=仕組みは、繰り返し行われる業務への導入で大きな効果を発揮する事が可能だからです。
システム化・導入のメリット:俗人化の脱却
上記に関連し、今までの業務の棚卸、標準化の過程で往々にして俗人化されていた業務からシステムへ移行を狙う事が出来ます。特に、過去何十年も利用されているシステムでは、古いシステムで対応できない部分を人がよしなに対応している場合が多く存在します。
システム化・導入のメリット:コスト削減
システムかをすることによりプロセス・業務改善を実施し工数削減に寄与します。
システム化・導入のメリット:作業品質の向上
システムは何も工数・コストだけではなく、システムによりこれまで手作業で実施していた為に発生していたミス等が抑制され作業品質を上げる事を狙えます。
システム化・導入のメリット:データの充実
ITソリューションの導入でのシステム化を狙う場合、これまで取得出来ていなかったデータを取得出来るようになります。これにより、データを有効活用すれば業務の可視化が可能です。又、これまで仮にそれらのデータを手で生み出していた場合、データ量だけではなく、データ品質の面の改善も見込まれます。
システム化・導入のメリット:メンバーの成長
システム導入プロジェクトの副産物として、プロジェクトを通してメンバーが様々な経験をし成長する事が可能です。大規模なシステム導入プロジェクトでは、その経験を通して飛躍的に成長を遂げる人材が表れます(むしろ、大規模プロジェクトではメンバーの成長なしい難しいのも現実です)。
システム化・導入のデメリット・リスク:導入コストと時間
システム導入には、専門知識や経験が必要な為コンサルタントやSierを活用したり、ITソリューションを購入したりとコストが発生します。又、既存システムの改修等も必要な場合もありコストと時間がかかります。
システム化・導入のデメリット・リスク:リソース枯渇
システム導入をする為には、社内のリソースをそのプロジェクトに配分する必要があります。そのため、リソース管理が適切に行われない場合リソースの枯渇が起こります。
システム化・導入のデメリット・リスク:離職
これは、2つの理由で発生します。1つは、システム導入プロジェクトでの変化により精神的・肉体的ストレスが嫌になり離職するパターンです。もう一つは、プロジェクトを通して成長した人材が更なるステップアップで離職するパターンです。両方ともプロジェクト(特に大規模)を実施する際には考慮が必要です。
システム化・導入のデメリット・リスク:プラット―フォーマービジネスの依存
ERPやクラウドソリューションの近年のモデルはサブスクリプションモデルです。1度そのソリューションを導入するとなかなかやめる事が出来ません。これはシステム導入に限った話ではないですが、大規模なシステムを導入した場合、それらのプラットフォーマーのビジネスモデルに乗っかる形になるので自社ビジネスがある程度依存するリスクがあります。
システム化・導入のデメリット・リスク:社内教育
システム導入に向けて、新しい知識が必要になります。その為、社内教育を充実し然るべき準備を検討する必要があります。又、導入前の教育だけではなく、導入後もシステムは新サービスを提供したり、機能拡充をしていきます。それらに対しても継続した学びが必要になりコストと労力が必要になります。
システム化をする際の注意点
では、ここで抑えていただきたいシステム化する際の注意点は、システム化・システム導入は、手段であり、目的ではない事です。ITに詳しくなればなるほど、あなたは様々な出来る事が増えシステム=ITを作りたくなります。
丁度、ハンマーを手にすると何かを打ちたくなる感覚に似ています。例えば、外で家族で食事をする目的があったとします。ハンマーを手にしたあなたは、ハンマーを使い日曜大工をし1日をかけテーブルを作ってしまうかもしれません。しかし、実査にはテーブルは買ってきてしまえば、その日のうちに家族で外で買ってきたテーブルで食事を出来たかもしれません。そして、外での食事を通して実現したかった本当の目的=家族での価値ある時間を達成できます。ハンマーで物を作る事に目的を勘違いしてしまった場合、黙々と一人でその時間作用に費やしてしまうかもしれません。
ですので、再三書きますが、大事な事は【システム化では手段が目的にならないように注意する】事が必要です。
社内SEやIT1年生がシステム導入する際の技術的な注意点は様々なあります。担当するフェーズによっても異なり、そのすべてをここでご紹介しても暗記は難しいです。各フェーズにおけるルールは、【社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール 】の1冊にまとめているので、活用いただければと思います。
システム化の進め方
ここまでの解説で、システム化の進め方は、要件定義や基本設計、開発、テストといったITのシステム開発を推進するイメージとはことなり、ビジネス課題をどのように仕組みで改善・解決するかだという事がご理解いただけたのではないでしょうか。
これをふまえシステム化の進め方は以下です。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
この図でも理解できるように、ITでのシステム構築の前に起案やプロジェクト立上といったビジネスの課題を特定し、どう解決するかを検討するフェーズがある事を認識が重要です。
プロジェクトの失敗は、システム構築の遅延等思われがちです。しかし、プロジェクトの本当の失敗は、プロジェクトとして開始もされないプロジェクトです。ビジネスとしての課題にも気づきもせず、いつの間にか競合他社に負けてしまい、ビジネスが人々に必要とされる価値を提供できなくなっていく事です。
システム開発の手段
実際にシステムを構築する手段は様々な存在します。以下では、ITでのシステム解決に対象を絞りどのような選択肢が存在するのか解説します。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
事業戦略の方向性としてだけでも、
・局所的な業務改善を推進するのか
・それとも、BPRでプロセス全体を抜本的に見直すのか、
・既存業務をデジタル化するのか、
・お客様の体験をデジタルで改善するのか
選択肢があります。
これに加え、ITのソリューションをどう構築するかの選択肢も多岐です。
・エンハンス開発
・スクラッチ開発
・パッケージ導入
・クラウド利用
さらには、ITの開発を実施する開発手法も
・ウォーターフォール
・アジャイル
・ハイブリッド
と、様々なモデルが存在します。
これらのシステム構築の方針・アプローチを選択肢プロジェクトを進めます。
システム導入・開発プロジェクトの目的とは?IT初心者がシステムを開発する前に理解したい事まとめ
システム開発の目的はビジネスへの貢献です。ビジネス課題の解決の1手段です。システム化=仕組み化なので、ITでの解決手段だけではなく、様々な方法でビジネス課題を解決する事が出来ます。システム化というとIT化にマインドが固まってしまいがちですが、ITだけでの解決手段だけではなく、頭を柔らかくしてビジネスに最適な課題解決方法を導き出す必要があります。
誰のビジネス課題を解決するかという点も重要です。ユーザーの課題・要望は時としてその個人の不便を解決したい要望になってしま体る場合があります。その点を留意し、本当にビジネスの課題は何か自問し課題認識を正しくする必要があります。
その上で、もし仮にITでその課題を解決する場合には、一足飛びにシステム開発やITソリューションの導入に移るのではなく、様々なシステム構築の選択肢の中からどのような選択がビジネス課題の解決に最適か検討を進める必要があります。
ITでのシステム構築の進め方に関しては、以下のシステム開発の記事一覧で学ぶことが可能です。又、IT初心者・社内SE初心者向けにノウハウを1冊にまとめた【社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール】も有効です。