PoC(概念検証)って何?
そもそもの定義や進め方を知りたい
と言った疑問に答えます。
本記事を読むことで、PoC(概念実証)をどう進めればいいのか?や、進める際の注意点が分かるようになります。PoCはプロジェクトの成功角度を上げる事が出来る便利なアプローチです。上手く使いこなせるようになれば、システム開発の全体リスクを低減させ、コスト削減も可能です。
本記事で解説する内容
・PoC(概念検証)の定義
・進め方
・PoCの注意点
✔記事の信ぴょう性
SIer SE→現、一部上場企業社内SE(IT歴15年以上)。基幹システム開発、及び、グローバル16拠点への導入やSCM・MDM等システム開発。社内SEの情報サイトIT Comp@ss運営者。「社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール」著者。
本記事は、以下の社内SE基礎講座の「PoC(概念検証)とは?進め方やコツ」の記事です。
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リリース・運用
システム移行計画のリスクと抑えておくべきポイント
PoCとは何か?IT用語解説
PoCを理解する為に必要な観点は以下です。
PoCの定義
PoCと混同されやすい用語の理解
実証検証(Validation)とは?
プロトタイプ(Prototype)とは?
MVP(Minimum Viable Productとは?
PoC、 実証検証、プロトタイプ、 MVPの図解
PoCの読み方に関しては、「PoC何て読むの?(Proof of Concept・ポック) の読み方・用語解説」の記事を参照ください。
PoCの定義
「PoC」は「Proof of Concept」の略で、あるアイデアやコンセプトが技術的に実現可能であるかどうかを証明するための実証実験です。具体的には、アイデアやコンセプトを簡単な形で実装し、その動作や可能性を確認することが目的です。
ChatbotGPT
簡単にいうと、机上で何かを検証する事をPoCと言います。まさに、Proof (証明する)of Concept(コンセプト・考え)です。
ITの開発や導入を検討する際に、不確かな部分があるのでプロジェクト開始前に、その部分をプロジェクトから切り出してPoCと言う形で検証したりします。こうすることで、不確実部分の確実性を上げプロジェクトを開始できたりします。
PoCと混同されやすい用語
PoCと混同されやすい用語は以下です。この関係性を理解することで、よりPoCの位置づけが明確になります。
PoC(Proof of Concept)
技術的なアイデアやコンセプトの実現可能性を証明するための実験。
実証検証(Validation)
特定の要求事項や仮説が正しいかどうかをテストする段階。
プロトタイプ(Prototype)
製品やシステムのデザインや機能を試作し、ユーザーのフィードバックを得るためのモデル。
MVP(Minimum Viable Product)
最小限の機能を持つ製品やサービスの初期バージョンで、市場での受容性や需要を検証するためのリリース。
PoC vs 実証検証(Validation)
特定の仮説や要求事項が正しいかどうかを確認するプロセスです。この段階では、システムや製品が本当にニーズを満たし、目標を達成できるかどうかをテストします。実証検証はより詳細で、より実際の状況に近い条件で行われます。
PoC vs プロトタイプ(Prototype)
製品やシステムのデザインや機能を試作し、ユーザーにフィードバックを得るためのモデルです。プロトタイプは、実際の製品に近い外見や機能を持ち、ユーザーが使用して評価できるようになっています。
PoC vs MVP(Minimum Viable Product)
最小限の機能を持つ製品やサービスの初期バージョンです。MVPは市場での受容性や需要を検証することを目的としており、早期に市場投入することで実際のユーザーの反応を得ることができます。
PoC、 実証検証、プロトタイプ、 MVPの図解
なんとなく、PoC、プロトタイプ、MVPの違いがつかめてきたかなと思います。以下では、それぞれの違いを様々な角度で図解し比較していきます。
1 RISABH社サイトより引用
これまで解説していないProduction=本番を追加し解説しています。左から右にそれぞれのアプローチの一般的に要する時間、左の下から上へ、用途や特徴の違いを解説しています。
POCは最短、分析用
Prototypeは、週の感じで、システムシュミレーション用
MVPは、月のイメージで、顧客へのドラフトシステム作成用
Productionは、年単位で、フルシステム開発用
といったイメージです。
https://www.rishabhsoft.com/blog/poc-vs-prototype-vs-mvp
プロジェクトにおけるPoCの使い方のイメージをつかむことが可能です。システム開発でPoCを実施する際には、不明確な部分を切り出し、数日から数か月のスパンで時間を切り、目的を明確にし検証を実施します。
2 Ali Sedighi氏リンクドインより引用
各アプローチ・プロセスで生み出す価値の視点で解説します。左の縦軸の価値です。Ideaはプリセールスで活用しこの時点では価値は低く、そのアイディアを描く際にPoCやPrototypeを活用しだんだんと生み出す価値も大きくなります。開発時には、Pilot・MVPのアプローチで実際にソフトウェアやプロダクトを作り出し価値を創造していきます。
MVPは、最小限のシステムや商品を構築し顧客へ価値提供を開始するイメージです。プロトタイプやパイロットは本番の製品やソフトウェアに非常に近い状態の開発を実施します。一方、PoCはそれらとは異なり、アイディアの実現性を上げるもしくは検証する為に実施します。
PoC(概念検証)の目的
ここからは、PoCを上手く進める為に、PoCの中身に関して深堀し解説していきます。抑えておきたいポイントは、
・PoCの目的
・PoCの具体的な進め方
・PoCのコツ
の3つです。
初めに、PoCの目的に関して解説します。
プロジェクトにおいて不明確な部分の検証に活用できるのがPoC(Proof of
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Concept/机上検証・概念実証)です。不透明な部分をクリアにし、失敗するリ
スクを減らすことができます。例えば、ソリューション導入の際に説明やデモを
受けたものの、そのソリューションが自社の要求を満たすのか不透明な場合、
PoCで部分的に机上検証を行います。
したがって、PoCは検証によって白黒をつけることが目的です。裏返すと、検
証するべき観点を明確にせず何となく成り行きで実施してしまうことは失敗PoC
といえます。
PoC(概念検証)の流れ
一般的な、システム導入でのPoC(概念検証)の進め方に関して解説します。システム導入を参考にしますが、商品開発でも多くの部分は同じです。参考ですが、システム開発の全体プロセスは【システム開発の全体の流れ・工程】で解説しています。
進め方に関して抑えておきたいポイントは以下です。
PoCまでの流れ
PoC自体の進め方
PoCまでの流れ
アイディアを具現化する為に、本プロジェクト開始前に実施します。企画が完了し製品選定も完了。しかし、まだ技術的・ビジネス的な観点で不明確な点が残り解決しておきたい!そんなときに導入されるのがPoCです。上記のステップを使い流れを解説していきます。
企画・ビジネスケースを検討する
PoCを実施する
開発を進める or やめる or 修正する
1企画・ビジネスケースを検討する
一般のシステム開発と同様、PoC(概念検証)実施の際に最も重要な工程です。『企画・ビジネスケース作成』工程で、何の目的でシステム開発導入しようとしているか明確にする必要があります。万が一、この工程で、目的が曖昧だったり、間違ったゴール設定してしまうと、間違いなくPoCは失敗します。
2PoC(概念検証)を実施する
次は、「どのようにそのシステム構築するか? 」 を検討する工程です。PoC必要性もこの工程で決まります。ビジネスケースに基づき、実現方法を検討したいが不明確な部分がありもう少しリスクを減らしたい場合に、PoCを導入します。
PoCする箇所を特定するサンプル
例えば、あるビジネス要求のABCDに対応する案件があるとします。この際に、既存システムではDの機能の対応が難しい、もしくは、高額になってしまうと予想されるとします。一方、SaasのサービスでA~Dの全てが安価に対応できることが分かりました。
しかし、Dの要求に関しては、パッケージベンダーの説明では新バージョンから対応しているとは言うものの、どの企業もまだ未導入で実現性が不透明とします。この場合、PoCとしてDに絞り机上や概念検証を実施します。つまり、PoCで本当に新システムで対応可能かを判断し白黒をつける事を実施します。
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3 開発を進める or やめる or 修正する
PoCの目的は、上手くやる事ではありませんん。検証して白黒つけることです。検証の結果上手くいけば、想定通りプロジェクトを立ち上げシステムや製品開発に進みます。しかし、上手くいかない場合は、プロジェクトを止める判断を実施したり、考慮不足の観点を練り直します。無理くり進めてしまうのが一番良くありません。無理くり進めるのであれば体裁だけのPoCはお金と時間の無駄以外なにものでもありません。
PoC(概念検証)自体の進め方
PoCの進め方は、
①検証すべき部分を特定する
②検証のゴールを定義する
③検証の準備をする
④検証を実施する
⑤判断する
①検証すべき部分を特定する
PoCまでの流れで解説したように、WHYとWHATの部分をまずは明確にします。どの部分が不明確でなぜその検証を実施する必要があるのか特定します。この部分がおざなりになると意味のないPoCになってしまいます。
②検証のゴールを定義する
WHYとWHATが明確になれば、検証を開始する前にゴールを明確に定義します。PoCの目的は、次のアクションに進むために白黒をつけ判断することです。ゴールをPoC開始前に定義しない場合は、なぜPoCを実施しているかが不明確になったり、成り行きで得られた結果にあわせてゴールを定義し、なんとなく次へ移行してしまう最悪の事態になりかねません。
③検証の準備をする
検証する為に、必要な準備をします。ソフトウェア開発の場合、ミニプロジェクトを開始するような感覚で体制から何から準備が必要です。ここでよく論点になるのが、コストです。ソフトウェアの検証を実施する場合には、検証が済んでいないので年間ライセンスの購入はできればしたくありません。こういった場合、営業の一環でトライアルライセンス等で検証するのか、一部購入するのかパッケージベンダーと協議が必要です。
又、システム導入にSierを活用する場合には、どこまでコストをかけSierをPoCに投入するかも論点です。もしくは、PoC自体がSierの推進力も検討したい場合、当然どのようなスキーマでPoC支援をしてもらうのか見当が必要です。
④検証を実施する
PoCはだらだらと実施していては、ビジネスを次のステップに進めることが出来ません。したがって、計画的に短い期間で実施する必要があります。
⑤判断する
重要です。PoCの結果が望む結果であれ、想定と違う場合であれその結果から判断し次の行動を決める必要があります。PoCのやりっぱなし、成り行きでなんとなく本プロジェクトへ移行は避ける必要があります。
PoC実施時のメリット・デメリット
ソフトウェア開発におけるPoC実施時の代表的なのメリットとデメリットについて説明します。
PoC実施時のメリット
- 技術的実現性の確認:
- PoCは、新しい技術やアイデアの実装が実際に可能かどうかを検証するための手法です。この段階で技術的な問題や制約を特定し、事前に対処することができます。
- リスクの最小化:
- PoCによって、本格的な開発に入る前にリスクを最小限に抑えることができます。予想外の問題やコスト増大を避けるための重要なステップです。
- ステークホルダーへの説明:
- 新しいプロジェクトや機能の導入をステークホルダーや上級管理者に説明する際に、PoCは非常に有効です。このPoC結果を説明する材料・ツールとして活用できます。
- 迅速なフィードバックの獲得:
- PoCを通じて、利害関係者からフィードバックを得ることができます。これにより、開発方針を調整したり、優先順位を再評価したりすることが可能です。
PoC実施時のデメリット
ChatbotGPTを元に編集
- リソース・コストの消費:
- PoCを実施するには時間と労力とコストが必要です。規模は限定的ですが、ある程度それらのリソースが割かれることがあるため考慮が必要です。
- 結果の信ぴょう性がない危険性:
- PoCでは、実際の本番環境とは異なるシミュレーション環境等で行われることがあります。このため、PoCの結果が実際の環境での挙動を正確に反映しているかどうかを確認する必要があります。
PoC(概念検証)のコツや注意点
ここまでの解説でPoCを上手くすすめる為のエッセンスが含まれていますが、改めていくつかの観点で再整理します。
PoCのコツは以下です。
検証すべき観点を明確にする
ダラダラやらない
判断する人を明確にする
本番プロジェクトへの合流方法を事前に決める
PoCのための予算を検討する
プロダクトライフサイクルを理解する
検証すべき観点を明確にする
PoCで検証すべき観点がプロジェクト内で浸透していないと、ベンダーにPoCを推進してもらったとしても、本来検証が必要ではないことまで気になったりして効果的に進めることができません。PoCで何を検証するのか確認点を精査して絞り込み、それを関係者で共有することが必要です。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
技術検証が目的になってしまっているケースが時々見かけます。技術検証は、プロジェクトで解決したい課題解決の1つの方法の確認なだけです。もし開始したPoCの難易度があまりにも高く、コスト・時間・リソースが想定より大幅にかかる場合、中断し他の方法の検討も打ち手です。手段が目的にならないように注意が必要です。
ダラダラやらない
PoCに時間をかけすぎて本番プロジェクトの勢いが削がれることがあります。適切な絞り込み、早い検証、早い判断を意識する必要があります。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
判断する人を明確にする
PoCは、本番プロジェクトを進めるかどうか判断するのが目的です。物事を決める上で不確実性はつきものですから、予定していた検証を実施しても全ての不安が払拭されるわけではありません。最終的な責任を誰が持って判断するのか事前に決めておく必要があります。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
本番プロジェクトへの合流方法を事前に決める
PoCで部分検証した情報や検証のために構築したシステム環境は、うまく計画すれば一部をそのまま本番の開発に利用できたりします。PoCの結果によってはそこでそのシステムの検討を中止することもありますが、PoCがうまくいった場合のシナリオも事前に計画することで、効率的にプロジェクトを推進できる可能性が高まります。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
PoCのための予算を検討する
PoCはベンダーの営業活動の一環として実施してもらうこともありますが、タダだったとしても満足のいく検証ができなければ意味がありません。確認が必要な点をクリアにし、ベンダーと協議し、契約をして進めるやり方がセオリーです。そのやり方でPoCを実施することで、成果物を定義して進めることが可能になり、PoCの質が上がります。
社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール
プロダクトライフサイクルを意識する
もし既成ソリューションやサービスの導入やPoCを検討している場合、 プロダクトライフサイクル を理解しておくと便利です。プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に導入されてから廃止されるまでの過程全体を指します。これは製品が市場での受け入れや競争力、成熟度、利益性などの観点から変化する段階的なパターンを示すモデルです。
これがなぜ便利かというと、何かしらのソフトウェア等の技術検証をする場合、その製品・ソフトウェア事態の成熟度を理解することによって、実際にはPoCを何も自社で実施しなくとも他社へのヒアリングや実績調査で事が足りる場合もあります。
以下図では、製品ライフサイクルの一般的なものです。PoCが必要な技術検証の多くは、Aではなく、Bの成長期に存在する製品やソフトウェアの技術です。既に、成熟期を迎えている、ソフトウェアはもうすでに世の中で確認が沢山されあまり新規で検証が必要なポイントが無いはずです。あるとすれば、自社固有の特徴や要件の為特別に確認が必要と言った具合です。しかし、この場合、他社では、そのままの製品・ソフトウェアで利用できている場合、自社の要件を再考するのも選択肢の一つになります。
例えば、マイクロソフト社のWINDOWSを想像してください。WINDOWS97や2000が発売された時点では、製品はおそらく導入期や成長期でした。一歩、現在のWINDOWSは成熟期の製品と言えるため、製品事態における技術的な導入における検証が必要な観点はほぼ無いといえます。
PoC(概念検証)とは?意味・進め方をわかりやすく解説|IT用語まとめ
「PoCの進め方と成功のポイント」の要点を以下にまとめます。
PoCの定義
机上や概念で何かを検証する事をPoCと言います。まさに、Proof (証明する)of Concept(コンセプト・考え)です。
PoC(Proof of Concept)
技術的なアイデアやコンセプトの実現可能性を証明するための実験。
実証検証(Validation)
特定の要求事項や仮説が正しいかどうかをテストする段階。
プロトタイプ(Prototype)
製品やシステムのデザインや機能を試作し、ユーザーのフィードバックを得るためのモデル。
MVP(Minimum Viable Product)
最小限の機能を持つ製品やサービスの初期バージョンで、市場での受容性や需要を検証するためのリリース。
POCまでの流れ
企画・ビジネスケースを検討する
PoCを実施する
開発を進める or やめる or 修正する
PoCの進め方
①検証すべき部分を特定する
②検証のゴールを定義する
③検証の準備をする
④検証を実施する
⑤判断する
PoCnoメリットデメリット
PoC実施時のメリット
技術的実現性の確認
リスクの最小化
ステークホルダーへの説明
迅速なフィードバックの獲得
PoC実施時のデメリット
リソース・コストの消費
結果の信ぴょう性がない危険性
PoCのコツ
検証すべき観点を明確にする
ダラダラやらない
判断する人を明確にする
本番プロジェクトへの合流方法を事前に決める
PoCのための予算を検討する
プロダクトライフサイクルを理解する