ITニーズの高まりと、技術進歩によりAWS/RPA/IOT/AI(機械学習)等様々な最新技術を導入しビジネスを成長させようという動きが進んでいます。
それに伴い、最新の技術をビジネスに導入するPoC(Proof of Concept)にも注目が集まります。
そもそもPoC(Proof of concept)用語の読み方・意味をご存じない方は、こちらの記事をまずはご覧ください。
Googleトレンドの推移からもPoC熱の高まりをうかがえます。
PoC(Proof of Concept)の増加に伴い、PoCの失敗も増加しています。以下で詳細お伝えしますが、Microsoftの調査によるとPoCの3割は失敗に終わると言われてます。
この記事では、世界のPoC(Proof of Concept)の失敗事例から、PoC失敗の本質に迫ります。
✔記事の信ぴょう性
SIer SE→現、一部上場企業社内SE(IT歴15年以上)。基幹システム開発、及び、グローバル16拠点への導入やSCM・MDM等システム開発。社内SEの情報サイトIT Comp@ss運営者。「社内SE 1年目から貢献!情シス 企画・開発・運用 107のルール」著者。
PoCの失敗は大きく2種類に分類可能
1. PoCを実施しての失敗 ←評価すべき失敗・価値ある失敗
2. PoCまでたどり着かない・実施しない ←これがPoCの本当の失敗。
この根拠を、「Facebookの失敗事例 」 、「日本のPoCの失敗の傾向 」 から詳しく解説していきます。
PoCを実施しての失敗=評価すべき失敗・価値ある失敗
Microsoftの調査結果によるとPoCの1/3は失敗に終わる
2019年7月31日、Microsoft者はIoT関連意志決定者3000人を対象にした調査結果で驚きの内容を公表しています。
PoCの30%が失敗に終わると従事者が回答しています。
企業組織の3000人を超えるIoT関連意思決定者を調査
— はぢ@DX (@haji_dx) February 15, 2020
約3分の1のプロジェクト(30%)が概念実証の段階で失敗
理由は、
・実装が高額なため
・最終的なメリットが不明確https://t.co/IaSJqiPmDC@cnet_japan #PoC #社内SE
従事者からの回答で、失敗事態に責任がある立場という事も考慮すると実際には失敗の割合はもっと多いのかもしれません。
具体的なアメリカの失敗事例で更にPoCの失敗を深堀します。
Webの巨匠のFacebookのPoC失敗プロジェクト「M」プロジェクト
Facebook の成長の陰に、挑戦と失敗があります。
— はぢ@DX (@haji_dx) February 15, 2020
Mプロジェクトもその1つ
巨人ですら沢山転んで学びを繰り返します
Facebook、AIアシスタント「M」の提供を終了へ https://t.co/aUTH1HtXQC @cnet_japanさんから
CNETによると、2015年8月に発表されたFacebookの「M」= バーチャルアシスタントチャットボット が2018年1月19に姿を消したと伝えています。
「M 」 は、人工知能(AI)を利用して、FacebookのMはAI+契約社員により「Messenger」アプリ内でユーザーの質問に答えるサービスでした。
当初の想定は、SiriやAlexaの様にテキストでコミニケーションをし、ユーザーのスケジュールのアポ等を支援する予定でした。
PoC実施後、ユーザーに役立つ提案とともにメッセンジャーの会話に飛び込むサービスとして提供されました。しかし、期待とは裏腹に、不適切な受け答えが散見されることが判明しました。
引用元: TechMe
本当にFacebookのこのPoCの挑戦は失敗だったのでしょうか?
「M」プロジェクトで作成された機能自体は、廃止になりました。このチャレンジでFacebookにはどれだけのネガティブインパクトを与えているのでしょうか?
Facebookサービス提供の歴史
Officetimelineのサイトから、過去のFacebookで行われたメジャーイベントを見る事が出来す。
このタイムラインの中でアプリ開発・システムリリースに関連する項目に〇をつけてみます。
2014年にサービスインしてから、年々サービス提供の感覚を縮めながらアプリリリースを繰り返しています年を追うごとにサービス提供のスピードが増しています。
様々な、研究開発を積み重ね、システムリリースをしていたことがうかがえます。
Facebookは価値あるサービスを提供しユーザー数を年々増加させている
Facebookの月間アクティブユーザー数と売上推移を見てみましょう。
Facebook月間アクティブユーザー数
毎年好調にユーザー数を増やし、2019年の第1四半期の時点で、20億375万人のユーザーがいます。物凄い数字です。
意味のある研究・開発を繰り返し、サービスを提供しユーザーに求められる機能・サービス開発を継続し、ユーザーを魅了していることがうかがえます。
PoCは未来へのチャレンジ、挑戦しないことが本当の失敗
未来は誰にも分りません。その前提に立った時、PoCを未来へのチャレンジと定義すると、本当の失敗はチャレンジしない事になるのではないでしょうか。
The only people who never fail are those who never try. -Ilka Chase (絶対に失敗しない人というのは、何も挑戦しない人です。 -イルカ・チェイス) #inspirational #quote #名言 #格言
— Affirmation&Quotes (@AffirmationB) April 6, 2019
以下ウォルトディズニー氏も同様のコメントをしていました。
🍺おはようございます!
— アキラ@仕事ハックアドバイザー (@lifeeats20busin) October 3, 2019
ウォルト・ディズニーの名言
「失敗したからって何なのだ?失敗から学びを得て、また挑戦すればいいじゃないか」
失敗を恐れて挑戦しない理由はありません。行動を迷うのは絶対に損。今日も、小さくてもいいのでチャレンジしましょう🧐#おは戦r1004ok
Facebookの話に戻ると、「M」のような無数のTry and Errorを繰り返し、その中からお客様に新しい価値を継続的に届けられていると言い切れます。
2/16
— ひとっちゃん ひーくん 🐬🍑 (@HHitoshi7) February 15, 2020
誕生日の有名人の名言#311
「早稲田大学の生みの親」
大隈重信
名言
「諸君は必ず失敗する。成功があるかもしれませんけど、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たねばならぬ。」 pic.twitter.com/IYNcD3H0hP
成功の数以上に失敗がるなんて当然と言えば当然ですね。
Facebook全体でみたら、単一のPoC死(失敗)は問題ではなく、無数のプロジェクトが進展しない事が、本当の問題です。
本当のPoC死(失敗)は、
・PoCで思わしくない結果を迎える事ではなく
・やりもしない事である
・言い換えるとPoCまでたどり着かない案件である ←PoC失敗の本質
日本企業は挑戦出来ているだろうか?日本のPoC死事例
三菱電機インフォメーションシステムズ 小林 氏がビジネス×ITで以下の様な内容を記事にしています。抜粋しご紹介します。
上記の結果によると、
・PoCの成功確率は、全商談で見ると4%
上記でお伝えした、海外のPoC失敗比率(30%)と比較すると更に悪い4%という数字になっています。
「新規事業の成功確率は1パーセントに満たない」と言われます。ビジネスにおける、いわゆる「千三つ(センミツ)」です。ですので、この4%も決して悪い数字ではありません。
注目すべき日本の問題点が浮き彫りに、始まらないPoCが7割
上記の調査結果で、注目いただきたい数字は以下の赤枠の中の数字です。
消滅37件・検討継続中12件です。
Microsoftの調査結果では、PoCの失敗は30%でした。
日本の場合は、そもそもPoC自体を約70%は、やりませんという実態です。
技術の進歩により、気軽にPoCが低価格・短納期で実現可能な現状からすると、以上に低い数字です。
実際、日本企業ではあまりにも腰の重いケースを目撃しています。
日本とアメリカの雇用を考えた場合、日本は失敗でも解雇されない、アメリカ失敗=解雇の可能性ありです。となると、日本企業でのPoCはさらにリスクが低いはずになります。
なぜ日本のPoCへの挑戦がこんなにも悪いのか?
日本でのPoCがここまで進まないのには様々な理由があります。まとめてみました。
・日本はIT従事者がSierで仕事、一方アメリカはIT従事者が社内SEとして活躍
・ITリテラシーの違い
・失敗を恐れない文化の違い
日本はIT従事者がSierで仕事、一方アメリカはIT従事者が社内SEとして活躍
このITの構造の違いが影響しています。日本では小さなPoCを実施したくとも、そもそも有識者をベンダーから集めコストをかけ実施しなければいけません。一方、アメリカの場合、SEはユーザー企業にほとんど就職しています。社内の調整さえつけば外部リソースを前提にしなくとも比較的容易にPoCが開始できます。
ITリテラシーの違い
日本とアメリカでは、ITリテラシーの感度が違います。特に、管理職以上の年配の人材で大きなひらきがあります。これにより、ITのPoCの意思決定スピード、及び、投資への重要度の認識と対応が雲泥の差です。
以下総務省の資料抜粋です。このIT投資額の違いにもITリテラシー・IT化の重要性のとらえ方の違いも影響していると推測できます。
我が国の平成13年(2001年)の情報化投資額は25.0兆円であるが、米国の情報化投資額(注1)は5,499億ドル(約66.6兆円)と我が国の約2.7倍となっている。また、情報化投資額の民間設備投資額に占める割合は、平成13年(2001年)には我が国が29.4%であるのに対し、米国は42.9%である(図表1))。さらに、平成2年(1990年)から13年(2001年)にかけて、我が国の情報化投資が2.49倍に増加しているのに比べ、米国は6.11倍と2倍以上の増加率を示している(図表2))
失敗を恐れない文化の違い
アメリカのチャレンジ精神と日本の比較的保守的な考え方があります。この文化の違いにより、アメリカは、「アメリカンドリーム」のイメージからも理解できる通り、リスクをとりチャレンジする文化・風土ができあがっていません。しかし、日本はそれがありません。
その特徴的な数字が日本とアメリカのユニコーン企業数の違いです。
PoC(Proof of Concept)失敗事例で学ぶ本質とは?まとめ
PoC(Proof of Concept)失敗は、2種類あります。
1つ目は、PoCを実施し失敗する事例。
2つ目は、PoCを実施もしないで頓挫してしまう例です。
Facebook/アメリカの失敗事例からの学びは、PoCの本質的失敗は、やりもしないで終わる事です。
FacebookでもPoCの失敗はありますが、それらの失敗を乗り越え事業の拡大を成し遂げています。
日本ではチャレンジなき失敗が沢山あります。
まずは、PoCでの失敗は恐れるに足らない事実と、PoCを実施もしないリスクの方が圧倒的に大きい(コスト・時間も圧縮されている現状を踏まえると)事の理解が必要です。
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